札幌高等裁判所 昭和39年(行ソ)3号 判決 1965年1月25日
北海道上川郡東川町西六号北二二番地
再審原告
石井義勝
旭川市宮下通一〇丁目
再審被告
上川税務署長
菊地英夫
右訴訟代理人検事
山本和敬
同
法務事務官 森麟二
同
大蔵事務官 草野尚
再審原告は、当庁昭和三五年(ネ)第二九七号不当課税取消請求控訴事件について、昭和三六年九月一九日言い渡され、同年一〇月七日確定した判決に対して、再審の申立をした。当裁判所は、これにつき次のとおり判決する。
主文
再審請求を棄却する。
再審費用は再審原告の負担とする。
事実
再審原告は、原判決取消の判決を求め、請求原因として、別紙(一)(二)のとおり陳述し、「民事訴訟法第四二〇条第一項第六号の事由として、原判決の証拠となつた乙第一八号証(昭和三〇年分農業所得再調査請求に対する実額調査書)が偽造されたと主張するものであるが、同条第二項所定の事由は主張しない。また、同条第一項第九号の事由としては、原判決において『控訴人の昭和三〇年度の実際の収穫総石数は六〇石』と認定されているが、実際には、七六石八斗であるので、この点が同号の事由に該当すると主張するものである。」と附陳した。
再審被告訴訟代理人は、再審請求棄却の判決を求め、再審原告主張の再審事由は争うと述べた。
理由
再審原告の主張する再審事由のうち、民事訴訟法第四二〇条第一項第六号所定の事由については、同条第二項の事由が主張されていないので、適法な再審事由ということはできない。また、同条第一項第九号所定の事由と主張するものは、単なる事実誤認をいうに過ぎず、「判決ニ影響ヲ及ホスヘキ重要ナル事項ニ付判断ヲ遺脱シタル」場合に該当しないこと明らかである。
よつて、本件再審請求は、これを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担については、民事訴訟法第九五条に従つて、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 伊藤淳吉 裁判官 臼居直道 裁判官 倉田卓次)
別紙 (一)
理由
一、被再審人の提出したる再審請求人の生活内容計算書は、虚構である。「明確なる立証あり」被再審人の提出せる、再審請求人の自家労働力の必須要件たる家族別年令表は、虚偽である。「戸籍法が之を立証する」
二、札幌高等裁判所の判決主文は、再審請求人の所得算出基礎たる生産米数量に重大なる遺脱及び齟齬を来しています。即ち、再審請求人の総生産米数量は百九八俵にて、「再審請求人の所得収支計算書提出してあり瞭らかです」而るに、判決主文は供出した米は百五〇俵であり、総生産米は百六〇俵であるとして、自家保有等不明に付き、信用性が欠くるものと断しています。本件の骨子は所得高のある、なしの算出計数ですので此の高裁の判決文中の判断の誤着三十八俵は、判決理由に重大なる齟齬となり、再審請求人の他の正しい主張の一切の計算指数も亦誤りの如くになります。本件に付き手続其他欠缺は御指導給りなし。
別紙 (二)
理由
再審請求人が本件に及びました動機は、当時の被再審人の為しました再審人の農業所得算出方法が実在の証明を無視して「一般の農民所得税もこの例に依る所が多いです」唯机上の推計而巳の空理を掲げて君臨しましたのと此の在方を知悉して、無法な地方行政に参与出来る立場の人等、悪質な農業所得算出資料の提供に依り、人為的に擅断されましたので「増収賄の動機ともなる」地方行政「末端の」と税務行政が公正で末端の農民と雖も、安寧と秩序がより良く保たれ、安心して社会生活が出来ますようとの念願に堪えざる次第にて、再審請求人の当面しました過去の一例ですが「昭和二十九年度冷害凶作年」村の農業委員の産米実収高検見作況調査、指数之が「当該年度の己人別所得税算出の基礎資料となる」三万四五千俵にて、実際に村の農家の政府へ売渡し供出米が、五万俵を超え「被再審人は、此の供出米の数量と、食管法に基づく保有米の合計数量を、所得税算出資料として確保「約八万俵を超える」この計数を前記村の農業委員の検見作況指数に依り、各巳人別を%謂ゆる比例歩率を乗じて換算して算出する「ここにからくりがある」作況検見に依れば収穫皆無に近い「保有食糧程度者」者から四五十俵の供出米の出た実績も多数あります。此の歩率を乗じての換算方法に依れば、皆無者はあく迄〇にて作況指数の高いものは、当初は不当な数量でありませんが、超過生産数量の換算歩合率を乗じますれば、架空な計数が出ます。「実際の証明が出来る事実を無視して」当該年度、再審請求人は、村の農業委員会の検見より割出された供米可能数は米四〇俵にて、出荷指令を受け実際に出荷出来ましたのは米八〇俵にて之に、自家保有米量を加えたのが再審人の生産量ですが、所得税の算出の時に使用されたのは、前記の如き換算歩合率を乗すれば、百八十俵以上となるとの事にて、被再審人は課税しましたので冷害凶作年五人の子供と八十余才の病老人を抱えた家庭の農家に所得税而巳にて三万円にて「かかる悪弊は今猶残存しています事の大小の差はありますが」此の不当な課税の在方是正の為、被再審人に再三御願いしましたが、手続の拙劣に依り無視されし次第にて、超えて昭和三十年度に於きまして、被再審人の指導にて「手続上の件税務署に於ては納得の行く税の在方スローガンにて指導の責任あり」前年度よりは、是正されましたが悪弊は一掃されるに至らず、本件裁判を仰ぐに至りし次第にて。
本件裁判中被再審人の提出に依る再審人の所得算出書の抵計に依る家計収支決算書期首がこう期末だこう推計表は、前記の如き被再審人の関係各係官の杜撰な課税手段に依る面目保全の隠蔽策に他ありません。